先日、近郊の先生方中心の勉強会がウエブで行われ卵アレルギーのお話しが出ていました。 ピーナッツと同じ様に「早期に卵の摂取を始めた方がアレルギーが軽くなった」という報告を演者の先生がご報告されていました。
●「早期に卵の摂取を始めた方がアレルギーが軽くなった」という報告に関して、コメントします。
卵に関してはかなり昔、 自分が小児科医でアトピー性皮膚炎ばかりを担当している時に除去食(今では死語)という治療をしておりました。 その当時は大きな治療法の一つでした。
実際に卵のアトピー性皮膚炎に効果があるのですが、血液検査のIgEなどの検査結果とは関連が ない患者さんの例もあって「食事の除去食」に関しては効果について意見がいろいろありました。
その当時から皮膚科の先生方は食事は関係ない・・・というのが主流の意見でした。
おそらく皮膚科で除去食を実際に治療として経験した医師はほとんどいないでしょう。
けれども重症の患者さんの場合には実際に効果がある場合がほとんどです。
卵に関しては間違いなく効果はあります。 重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに関してです。
ただ除去食を完全に行った場合には一旦皮膚炎が改善した後に悪くなる時期があります。
当時自分が師匠と思っていた医師は「ふきだし現象」という言葉を使われていました。 体内に残っている(特に油関連)毒素がじわっと皮膚にでてきて痒くなる・・・(これもお母さん方にわかりやすいようにだと思います)という表現をしていました。 医学的には??という表現でずが、実際をみていて経験すると納得のできる単語でした。
このアトピー性皮膚炎が一旦改善した後にもう一度皮膚の状態が悪化する現象・状態のことをよく理解していないと 除去食は無効だと勘違いしたりする場合が多く、説明するのに苦労する場合が多い印象でした。 ものすごくよくなる、ステロイドがいらなくなる・・・という良い評判だけが先に走りますので、家族のいらだちは理解できます。
さらに除去食をおこなう場合は血液の検査結果だけではなく、栄養状態を考える必要があります。
代替食を提案、アドバイス等する必要があります。 このアドバイスができる栄養士の方とセットで治療しないと栄養状態に偏りが起こります。
自分の場合は病棟を担当する栄養士の方が栄養部門のトップでしたので、小児病棟の油を変更してみて1週間位でものすごく皮膚がきれいになって、驚かれました。その後はとても栄養療法(除去食)に協力的になっていただきました。
ある程度のご年配の女性でお子さんを育てた経験もある方だったので、子供への愛情がとてもあり、代替食の献立などもアイデアをいろいろ出していただけました。 卵、その他(1つのアレルギーではない事が多い)も除去するとなると、普通は献立が立てられなくなります。 ですから具体的なアイデアを出さないと実際には除去食の治療は不可能となります。
この代替食の実施ができずにあるクリニックの患者さん複数(10人位だった覚えがあります)が栄養失調児となり、新聞に掲載されました。
そのクリニックはアレルギーの検査(その当時はRAST)の数字がかなり減らないと除去食解除にしなかったようですが、代替食の提示がおそらく十分にはできなかったのだと予想します。
子供はすき好みがかなりありますので、食べない子供はほとんど栄養が摂取できない状態になったのだと思います。 小児科学会でも問題になり、その後は除去食は表舞台からは消える事になりました。
言いたい事は 卵アレルギーがひどい方には除去食(妊娠時は母親です)は極めて有効な手段である事は間違いありません。 他の項目でご紹介した皮膚科の医師の報告もこれを支持しています。
卵アレルギーの程度、兄弟の状況、家庭環境に合わせて除去する選択肢もある・・・という事は自分は知っています。