https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38772752 リンク先の記事のまとめ、とコメントです。
低用量経口ミノキシジル(LDOM)は、脱毛の治療として重要な手段です。 しかし頻脈、低血圧、浮腫などの心血管系の副作用は、低用量であってもおこりえます。 高血圧の治療における標準的な投与量は通常 10 ~ 40 mg/日です。しかし脱毛症の治療における投与量についてはコンセンサスがありません。
臨床試験ではミノキシジル内服は0.25~5 mg/日で評価されています。
5 mg/日を超える報告はたくさんはありません。
最近メタアナリシスにより、 LDOM(低用量経口ミノキシジル)と毛髪密度の増加と副作用の間に用量依存的な正の関連性が示されました。
男性型脱毛症(AGA)の治療に経口ミノキシジル 5 mg を服用している 30 人の成人男性を、24 週間の治療前と治療後に 24 時間ホルター心電図モニタリングと 24 時間携帯型血圧モニタリング(ABPM)で評価されています。
24 時間ホルター心電図モニタリングと ABPM (時間携帯型血圧モニタリング)に関して、関連する変化は見られませんでした。 10 人の男性を評価した結果によって裏付けられました。
これまでの研究で、正常血圧の患者に経口ミノキシジルを最大 10 mg/日まで投与したところ、血圧が軽度に低下し、心拍数がわずかに上昇することが報告されています。
経口ミノキシジルの高用量投与の潜在的な副作用を評価するために、以前の研究を完了した 30 人の患者のうち 11 人の用量を 5 mg/日から 7.5 mg/日に増量し確認をされています。
増量し6 週間服用した後、24 時間ホルター心電図と ABPM (24 時間携帯型血圧モニタリング)を使用して確認されているようです。
ABPM およびホルター モニタリングの結果は心拍数の若干の増加にもかかわらず、経口投与のミノキシジル 7.5 mg/日では、低血圧、頻脈、または夜間の低下障害は発生しませんでした。
頭痛を訴えた方がいましたが、治療中止には至りませんでした。
用量を 7.5 mg/日に増やした後、頭痛、頻脈、めまい、浮腫、不眠症などの副作用はいずれも認められませんでした。
これらの結果は正常血圧の人に対する経口ミノキシジルの軽度の降圧効果を裏付けるものである。
しかし、5 mg を超える用量は脱毛治療の標準とはみなすべきではなく、例外的な状況でのみ使用すべきであると研究者は提案しています。そして臨床医は高用量から始めるのではなく、徐々に用量を増やすことを推奨しています。経口ミノキシジルは非常に低用量 (0.25 mg/日) でも心嚢液や胸水などの重篤な副作用と関連していることを考慮することが不可欠です。
この研究はサンプルサイズは小さいものでしたが、経口ミノキシジル 7.5 mg/日を服用している患者における主要な心血管疾患の傾向の検出を妨げるものではありませんでした。
正常血圧の成人におけるAGAに対するミノキシジル 7.5 mg/日の投与は忍容性が良好で、心拍数の軽度の増加が見られましたが、血圧の変化は観察されませんでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 以下 院長・木藤のコメントです。
ミノキシジル5mgの内服をおこなった後にミノキシジルを7.5mgに増量して研究をしているようです。
結論的には血圧の低下は統計学的には認められず、心拍数は軽度上昇しています。
細かく言うと、最低脈拍数は7.5mgでミノキシジル服薬前とさらに5mgと比較しても統計的に有意に上昇していました。
おそらく最低脈拍数は睡眠時い起こっていると予想されます。 寝ているときの脈拍が以前と比らべると約10 上昇している事になります。
Variables | 前 | 5 mg/d | 7.5 mg/d | 前と7.5mg の比較 | 5mgと 7.5mgの比較 |
---|---|---|---|---|---|
心拍数(24 h); 1分間bpm (SD) | |||||
最低 | 47.3 (7.4) | 48.5 (6.4) | 53.0 (5.5) | 0.009 | 0.024 |
平均 | 72.6 (8.7) | 75.7 (9.1) | 81.3 (7.8) | 0.037 | 0.067 |
最高 | 129.9 (15.8) | 124.5 (11.1) | 131.9 (17.5) | 0.400 | 0.142 |
この研究でも述べられているように、「ミノキシジル5mg を超える用量は脱毛治療の標準とはみなすべきではなく、例外的な状況でのみ使用すべきである」 という提言は重要だと思います。
かなりの数のミノキシジルの文献を読みました。たくさんの報告はありませんが,頻脈・心嚢液貯留などの副作用はミノキシジルの容量に比例しません。 印象的には体質によって起こる場合と起こらない時がある・・・という感じでかなり少ないミノキシジルでも心嚢液貯留は起こりえるようです。
少量のミノキシジルからの方が安全です。 ですが、絶対に安全、というわけではありません。
動悸があった場合はしっかり脈を測定する必要があります。 これは緊張している場合は必ず増加しています。 具体的には診察中などは心拍数は増加していても当然ともいえます。(慣れていない間)
また症状がない場合でも心嚢液は溜まっている場合もあります。
可能なら全員心エコーをした方がよいのですが、コストや心臓に異常が発生する頻度を考えると、全員に心エコーを行うのは妥当とは言いにくいです。 心臓や肺の症状が少しでも発生した場合(仮にすぐに症状がおさまって消失した場合も)は心エコーの確認がベターという事は間違いない事だと考えます。
実際のところでは、少しでも違和感、異常を感じた場合はミノキシジルの服用は中止の方が安全かもしれません。 症状がなくても大丈夫か?の答えには心エコーを行う必要があります。 あとは新機能を評価する血液検査も参考にすべきだと考えます。