https://europepmc.org/article/pmc/pmc6773272 左記リンク先の文献を日本語訳し要点を提示します。
題目としては 「内分泌療法を受けている乳がん患者における 5α 還元酵素阻害剤とスピロノラクトンの安全性」です。スピノロラクトンの報告等はあまり見かけません。
結論から言うと,スピノロラクトンは女性ホルモンのエストロジェンを上昇させることは3分の2はできなかったという報告です。(ただし,乳がんの治療をうけている方たちなので一般論とは少し違うかもしれない内容です)
女性に関してはミノキシジルの使用の前,同時にスピロノラクトンを使用している施設はかなりあります。 あきらかな有効データを論文では見たことがなないので,「有効性は確立していないのでは?」という疑問がありました。 この報告での症例数が多くはないので断定する事はできません。 しかし有効ではない可能性はかなり高い,という事はいえそうです。
いつもの通り■ で囲んだ部分は院長・木藤のコメント,意見となります■
ただ,女性でミノキシジルの服薬(内服)は避けたい場合,スピロノラクトンは選択肢の一つにはなると思います。
■の部分は院長・木藤のコメントと考えてください。若い女性の場合は妊娠の可能性についてかなり慎重に対応した方がよいと自分は考えます。もちろん,パートナーの男性はもっと考える必要があると言えます■
ーーーーー以下日本語訳ですーーーーーーーーー■ ■の間は院長・コメントです
目的
内分泌療法(ET)を受けている乳がん患者および生存者に対する5α還元酵素阻害剤およびスピロノラクトンの実践的な理解と使用の基礎を皮膚科医および腫瘍医に提供し、これらの治療が性ホルモンレベルに与える影響、報告されている薬物相互作用、悪性腫瘍のリスクなどについて理解を深めます。■対象患者さんは乳がんの治療に関連があります。かなり特殊な状態の方々であるので,一般的な判断から逸脱している可能性は当然にあります■
方法
PubMed、Google Scholar、Science Direct などのデータベースを使用して、1978 年 1 月から 2018 年 4 月までに発表されたすべての研究が検討されました。このレビューには 47 件の研究が含まれていました。
結果
乳がん治療に使用されるET(内分泌療法)と5α-還元酵素阻害剤およびスピロノラクトンとの相互作用の証拠はない。5α-還元酵素阻害剤またはスピロノラクトンの使用による性ホルモンの変化はさまざまである。
女性患者284名を含む3件のランダム化比較試験、1件の症例対照研究、および6件の後ろ向きコホート研究で、5α-還元酵素阻害剤の血清エストロゲン濃度に対する影響が検討された。284名中97名(34%)でエストロジェン濃度が上昇し、284名中15名(5.3%)で濃度が低下し、284名中162名(57%)で不変であった。女性患者95名を含む4件の後ろ向きコホート研究、1件の症例研究、および1件の二重盲検クロスオーバー研究で、スピロノラクトンのエストロゲン濃度に対する影響が評価された。レベルは 95 人中 25 人 (26%) でエストロジェン濃度は上昇し、95 人中 6 人 (6.3%) で低下し、95 人中 64 人 (67%) で変化がありませんでした。
●最終的に、ほとんどの患者では、5α 還元酵素阻害剤またはスピロノラクトンを使用した場合、エストロゲン レベルに大きな変化はありませんでした。49,298 人の患者を対象とした 3 件の研究では、スピロノラクトン使用中に女性乳がんのリスクが上昇するという一貫した証拠は報告されていません。5α 還元酵素阻害剤の使用による乳がんのリスクは研究されていません。■乳がんのリスクに関しては関与は報告上ない,という事になります■
結論
スピロノラクトンを服用したほとんどの患者ではエストロゲン濃度の上昇は見られず、乳がんリスクの増加を示唆するデータもありませんでした。ホルモンおよび薬理学的活性に基づき、スピロノラクトンは乳がん患者の脱毛症および多毛症に関するさらなる研究に考慮される可能性があります。■エストロゲン濃度の上昇は約1/3~1/4位の人は上昇します,頻度が思ったより少ないな? という感じです。■
■乳がんに関しては大きな問題はないかもしれません。 スピノロラクトンを使用すると1/3 ~1/4はエストロジェン濃度は上昇しているわけです。
・多くの場合女性は予定していない妊娠を経験することがあるようです。
・ おおきなエストロジェンの変動はないかもですが,妊娠した児の性別によっては大きなリスクを抱える場合もあります。 そのためスピロノラクトンを使用する場合,避妊に関しては徹底されていた方がよいという事になります。
より安全かと思います■