分かりやすくまとめました。

ガイドラインを自分なりにわかりやすく、患者さんが判断・選択できるように コメントをいれていきます。  原文は「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」です。検索できます。学問的に書くと一般の方が読まれると要点が極めて分かりにくいです。 要点をまとめて記載しているつもりです。

円形脱毛症の病態と診断

治療 1.円形脱毛症の概念と診断

類円形の脱毛斑の後天性脱毛症です。

脱毛症状は毛髪が存在するあらゆる部位に発生しえます。

汎発型は頭部に加えて体毛全ての毛が脱毛します。

頭部では、脱毛斑の数や範囲から

単発型

多発型

全頭型

蛇行型 に分類されます.

 

自覚症状はないことが多いのですが、軽いかゆみや違和感、うすい紅斑をみることもあるとされています。 慢性期にはわずかに陥凹する事があります。

経過はいろいろです。再発を繰り返し慢性に経過することが多いです。

 

ダーモスコピー観察が診断には重要です。

活動期には感嘆符毛、漸減毛、黒点を認めます。

慢性期では黄色点が中心となります。

 

爪にも変化をみることがあり、最も多いのは爪甲(そうこう)の小さな点状陥凹です。 横一列線状に並ぶこともあるようです。

AAの発症頻度について,米国での調査では1万人あたり20.2人(0.2%)

平均年齢は33歳,男女差はありません。

皮膚科外来の 0.7から3.8% が円形脱毛症と言われています。

2.円形脱毛症の分類・重症度

AAの臨床的分類は

1)通常型AA 単発型:脱毛斑が単発のもの 多発型:複数の脱毛斑を認めるもの 2)全頭型AA:脱毛巣が全頭部に拡大したもの

3)汎発型AA:脱毛が全身に拡大するもの

4)蛇行型AA(ophiasis):頭髪の生え際が帯状に脱毛するものに分類する4).

 重症度の指標として,米国のAA評価ガイドラインでは

頭部の面積に占める脱毛巣面積の割合(S)と,頭部以外の脱毛の程度(B)により重症度を決定しています。

S0:脱毛がみられない 

S1:脱毛巣が頭部全体の25%未満 
S2:脱毛巣が25~49% 
S3:脱毛巣が50~74% 
S4:脱毛巣が75~99 


S5:100%(全頭)脱毛 

B0:頭部以外の脱毛なし
B1:頭部以外に部分的な脱毛がみられる 
B2:全身全ての脱毛と規定されています。

 脱毛巣の範囲が広い程(SおよびBの数字が大きいほど)重症で難治です。

Bに関係なくS2以上を重症症例と考え推奨治療法を決定しています。

3.急性期,固定期の概念

円形脱毛症の急性期の概念としては 急速に病変部の拡大が進む時期です。

ダーモスコピー観察では感嘆符毛、漸減毛、黒点 が多数見られる状況です。牽引試験(pull test)も陽性

 期間としては脱毛症状を自覚してからおおよそ半年です。 症状固定期は脱毛症状がおおよそ半年を超えた状況です。

4.円形脱毛症の病因・病態

医学的には毛包組織に対する自己免疫疾患と考えられています。

疲労や感染症など肉体的、精神的ストレスが引き金となるとされることがありますが、実際には明らかな誘因がないことも多いようです(ただし、自分でストレスを自覚できない方もおられると考えます)

病理学的には毛包周囲にリンパ球を中心に浸潤が観察されます。

毛包由来の自己抗原をターゲットにした自己免疫反応が誘発されると想定ます。

自己免疫疾患の合併が多いことなどからも自己免疫病因説が支持されています。

5.円形脱毛症の遺伝

人種を問わず円形脱毛症は認められます。男女差はなく全年齢層に出現します。

円形脱毛症患者の8.4%は家族内発症で、患者との関係(親等)が近いほど発症率が高く欧米の調査でも1親等内での円形脱毛症は一般に比べて10倍の確率です。

一卵性双生児での円形脱毛症一致率は55%と高率で、アトピー性疾患との合併率が高いです。

フィラグリン遺伝子異常を持つアトピー性皮膚炎患者では重篤なAAを合併する傾向があります。

現時点では円形脱毛症は多因子遺伝性疾患と考えられています。(複数の遺伝が絡んでいるという事)

6.円形脱毛症の合併症

円形脱毛症は橋本病に代表される甲状腺疾患8%、尋常性白斑4%、SLE、関節リウマチ、I型糖尿病、あるいは重症筋無力症などの自己免疫性疾患が合併することが知られています。

高頻度にアトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患を合併しアトピー素因が関与する可能性があります。

ダウン症患者では円形脱毛症の合併率が高いとの報告があります。

7.円形脱毛症とアトピー素因

AA患者47例中29例がアトピー性疾患(気管支喘息,アトピー性皮膚炎,軽度のアレルギー性鼻炎)のいずれかを合併し23),AA患者800例中187例(23%)がアトピー性皮膚炎を合併していたとの報告がある24).本邦でも患者200例のうち,患者本人や家族にアトピー素因があるものが108例(54%),患者本人にアトピー素因があるものが82例(41%),アトピー性皮膚炎の合併は46例(23%)にみられた25).アトピー素因と分類・重症化の検討では,小児群では34.6%に合併し,病型ごとの合併率は単発型(4/30:13%),多発型(25/76:33%),全頭型(11/25:44%),汎発型(12/24:50%),蛇行型(ophiasis)では(4/7:57%)であった26).本人ないし1親等家族にアトピー性疾患を有し,本人のIgE高値の症例をatopic typeと定義し検討したところ,患者209名の34%がatopic typeで,重症例の41%,軽症例の26%を占めた27).100症例の検討でも,アトピー素因合併群22例中15例(70%)で脱毛が重症化したが,非合併群78例中での重症化は42 例(52%)であった28).1946 年から2014年までの論文検索によるMohanらによるメタ解析でも,全頭型,汎発型AAは多発型と比較して有意にアトピー性皮膚炎との合併率が高いと報告している29).いずれの報告も,重症群ほどアトピー素因の合併率が高く,アトピー素因を持つ患者には注意を要することを示している.病理組織学的にもアトピー素因ありの群では,毛包周囲へのリンパ球浸潤が多く,好酸球,肥満細胞も浸潤していた.浸潤リンパ球ではCD4陽性Tリンパ球が60~80%,CD8陽性Tリンパ球が20~40%を占め,さらにHLA-DR陽性細胞やIFN-γ陽性細胞を多数認めた25).AA発症にアトピー素因が関与することは,合併率の高さ,臨床像,病理像,重症度,経過等に違いがみられることより強く疑われる.しかし,AA発症にどのように関わっているのかについての検討はまだ充分になされていない.  ・・・項目7は無編集、ガイドラインのまま

 

8.円形脱毛症の発症と精神的ストレス

AA発症に精神的ストレスが関与するかについて以前より議論がある.一般診療において,AA患者自身の脱毛症状が精神的ストレスで起きたのではないかと相談を受ける場面も多い.強い精神的ストレス後に脱毛症状を生じた症例を経験する機会がある一方で,全くその関与を自覚しない患者もかなり多い. AA患者31名の精神科的面接調査で,74%の患者が一生の中で一度以上は何らかの精神疾患の診断を受けているが,抑うつ状態と脱毛の病型には関連性を認めなかった30).また,1999年8月と11月にトルコ北西部で発生した大地震の発生前後におけるAAの発生率,性別,年齢,重症度,蛇行型AAの発生の有無についても有意差はなく,自然災害のようなストレス環境がAA発症の単一因子ではないとした報告がある31).臨床的観察から精神的ストレスの関与が明らかな症例群の抽出が困難であり,今もってAA発症と精神的ストレスとの直接の関連性についての科学的根拠は乏しい.一方で脱毛症状と精神的な負担の関連性についての報告はあるが32),安易にAAとストレスの関与を唱えるべきではない.ストレスホルモンであるCRHを含む視床下部―下垂体―副腎皮質経路(HPA経路)と毛組織との関係についての研究が行われており33),今後の科学的根拠のある報告に期待したい・・・項目8は無編集、ガイドラインのまま

 

9.予後について

アトピー性疾患や内分泌疾患の既往のない、個々の脱毛巣の最長存続時間が1年以内である少数の脱毛斑の場合、約80%の患者が1年内に毛髪が回復することが本邦で報告。が再発する例も多い。

欧米の報告で 34%~50%の患者は1年以内に毛髪が回復するが,14%~25%は全頭型や汎発型へ移行し、回復率は10%以下と報告されています。

長期間観察の報告で 成人では脱毛面積が25%未満(s1)の場合68%が回復50%未満の場合には32%が回復。より広範囲の脱毛面積の場合は回復率はわずか8%と報告.

15歳以下で発症した場合や蛇行型の回復率も低いと報告

アトピー性皮膚炎合併例の予後については結論付けられていない

急速に進行するが回復が早く短期的には予後良好な病型もあると報告されています。

●単発型あるいは少数の脱毛斑(数個程度)の症例の場合、発症後1年以内は経過を観察するだけでもよいかもしれない。

経過の長い全頭型や汎発型の場合は治療を断念しかつら等を使用するよう勧めるという選択もありえるが、免疫関係の薬の効果があり以前とは状況が異なると考えられる。 ただし、免疫系の薬は副作用・費用の問題があります。

 

10.治療   学会としての検証を以下で・・・

CQ1ステロイド局所注射療法の推奨度:B推奨

:S1以下の単発型および多発型の成人症例に行うよう勧める.

S1:脱毛巣が頭部全体の25%未満 

本邦でもトリアムシノロンアセトニドの局注がAA単発型、多発型のいずれにも有効であるとの集積研究が報告されている

有害事象として局注部位に萎縮や疼痛,血管拡張が報告されており、十分な注意が必要。 注意点として 広範囲に及ぶ場合に局注回数と注射総量が多くなるため、他の治療法も検討すべきである

・小児は長期経過をみた症例が少なく有益性と危険度を比較できないためと局所痛を伴うことから基本的に行わない。

 

ステロイド局注療法の実際

ケナコルトA水懸注皮内用Ⓡ:真皮下層レベルから皮下脂肪レベルに局所注射をする.投与間隔は4~6週に1回が推奨.

・局所注射部位はステロイドによる皮膚の委縮防止のためよく揉む事が必要。

眉毛に局注する場合には頭部に使用する濃度より低くし投与間隔が4週間よりも短くならないように注意する。

・ステロイド使用、後は緑内障・白内障などの予防で眼科受診を勧める

 

CQ2 局所免疫療法は有用か 自費治療

年齢を問わずS2(脱毛面積25%~49%)以上の多発型全頭型や汎発型の症例に第一選択肢として行うよう勧める。

ランダム化比較試験は未実施も症例集積研究と症例対照研究から、※SADBE、DPCP(SADBEが有効性高い)を塗布した部位は脱毛範囲が縮小することを示唆する信頼性あるデータあり

※(squaric acid dibutylester)というかぶれを引き起こす物質を塗る

・有害事象として、接触皮膚炎症候群、局所のリンパ節腫脹、頭痛、倦怠感、蕁麻疹、色素沈着、色素脱失などを併発することがあるので注意が必要

とくにアトピー性皮膚炎の合併例ではその皮膚症状が悪化する可能性がある。

治療開始前に副作用などについて患者へ説明と書面による同意が必要である。SADBE、DPCPに保険適応はない

SADBEとDPCPでの治療効果に大きな違いはないが,SADBEのほうがより強い接触皮膚炎が誘導されることが多い。

施行者も感作される可能性があるので「マスクと手袋」の着用要。調整は医師や薬剤師など専門的知識を持った者が行うほうがよいとされる。.原則としてステロイド外用との併用は行わない。(混合診療にあたるから?)

 

CQ3 ステロイド外用療法は有用か   推奨度B:単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対して1日1~2回のstrong,very strong,strongest クラスのステロイド外用療法を行うよう勧める。

2012年の英国のガイドライン70)で 「軽症から中等症の患者に発毛効果がある」とされた。   日本では膨大な診療実績があり委員会決定として推奨度Bとなったようです。 単発型から脱毛斑に融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対して、1日1~2回のstrong、very strong、strongest クラスのステロイド外用療法を行うよう勧めるとなっています。

塗り方ですが、今後脱毛を生じる可能性のある脱毛斑周辺部や、かゆみや違和感など脱毛前駆症状を訴える部位に外用可となっています。1回の外用使用量はfinger tip unit(FTU)を参考に脱毛斑の面積に従って決定する。

副作用としてはざ瘡や毛包炎に注意が必要で、長期使用により皮膚の萎縮、毛細血管拡張、陥凹(これは自分は経験がないです、まれと思いますが)などが発生する事があるので長期投与には注意が必要です。

 

CQ4 ステロイド内服療法は有用か

ステロイドの内服療法は発症後6カ月以内の「急速に進行しているS2以上の成人症例」に使用期間を限定して行ってもよい・・・と記載されています。

休薬後の再発率が高いことより、ステロイドの外用・注射などの他標準的治療に抵抗する症例に限って検討する・・・と記載されています。

肥満・満月様顔貌、緑内障、糖尿病、月経不順、消化器症状、ざ瘡、骨粗鬆症などの副作用の発現に留意する.小児は再発例が多く、安全性も確立しておらず副作用の発現も危惧れることから行わないほうがよいと記載。

CQ5 静脈注射によるステロイドパルス療法は有用か

再発の多さを考えると発症初期、増悪程度のひどい症例にて検討すべき・・・という内容になると思います。

●自分の経験と知識(多発硬化症の患者さん:同様にステロイドパルス療法が有効)からすると ステロイドは使用するならメチルプレドニン、デカドロンを使用して+αの効果を期待する事が重要です。 文献にはっきりと記載していませんが、プレドニンでは再発がとても多いという記載があります。●
ただし、内服のメチルプレドニンは保険では使用できない・・・そのため、プレドニンを使用せざるを得ない という事かもしれません。

CQ6 抗ヒスタミン薬の内服療法は有用か

日本では第2世代抗ヒスタミン薬内服の発毛効果に関してはある程度の根拠がある。

アトピー素因のある単発型、多発型の症例で併用療法の一つとして推奨する。と記載

円形脱毛症への保険適応はないためアトピー性疾患の診断が必要となる。

 

CQ7 セファランチン内服療法は有用か

ランダム化比較試験はないが、セファランチンの内服で脱毛範囲が縮小することを示唆する弱い根拠が見いだされている。  その他の方向から 保険適応があること、本邦には膨大な診療実績から安全性が担保されているので単発型、多発型の症例の併用療法として行ってもよい、と記載されています。

 

CQ8 グリチルリチン,グリシン,メチオニン配合錠(グリチロンⓇ)の内服療法は有用か

ランダム化比較試験はないが、保険適応があることや本邦における膨大な診療実績により安全性が担保されていることも考慮し,単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよい・・・と記載されています。

 

CQ9 カルプロニウム塩化物の外用療法は有用か

 本邦では「カルプロニウム塩化物外用液 、商品名フロジン」は円形脱毛症の適応症で保険収載されており、膨大な診療実績で安全性が担保されているとして単発型・多発型の症例に併用療法として行ってもよいと記載されています。

 CQ10 ミノキシジル外用療法は有用か

併用療法の1つとして行ってもよい・・・と記載。

3件のランダム化比較試験(症例数30、観察期間1年)、(症例数30,観察期間64週)、(症例数31,観察期間15カ月)にて「3%ミノキシジルの外用」日本販売未 がプラセボに比べ脱毛範囲を縮小させることを示唆する弱い根拠あり。さらに1件のランダム化比較試験(症例数66、観察期間1年)では、5%ミノキシジル外用剤が 1%ミノキシジル外用剤に比べ脱毛範囲をより縮小させる弱い根拠が見いだされている.  S2以上の広範囲に脱毛している場合には無効である。海外での診療実績を考慮して単発型・多発型の併用療法可とされた。

 CQ11 冷却療法は有用か

冷却療法の有用性は十分な実証はない。本療法は保険適応外である。しかし簡便で副作用も軽微な点も考慮し、単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよいと記載されています。

水疱形成や強い疼痛を生じない程度の実施が推奨されます。

 CQ12 紫外線療法(PUVA療法・エキシマライト・narrow-band UVB 療法)は有用か

ランダム化比較試験はないが 症状固定期の「全頭型や汎発型の成人例」にPUVA療法を行ってもよい.すべての病型の患者に対して「エキシマライト」または「narrow-band UVB療法」を行ってもよいと記載されています。

 CQ13 紫外線療法以外の光線療法(直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザーⓇ)、

レーザー治療(LED,低出力レーザー)、PDT)は有用か

直線偏光 「近赤外線」照射療法は単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよいがレーザー治療およびPDTは根拠がないので行わないほうがよい.

 推奨度:C1(直線偏光近赤外線照射療法)、C2(レーザー治療,PDT)推奨文:

直線偏光近赤外線照射療法は単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよいが、レーザー治療およびPDTは根拠がないので行わないほうがよい.

解説:直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザーⓇ)、レーザー治療(light emitting diode(LED)、低出力レーザー)およびphotodynamic therapy(PDT)の発毛促進効果を評価するランダム化比較試験は行われていない.

直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザーⓇ)に関しては、2件の非ランダム化比較試験より、単発型や多発型の症例にカルプロニウム塩化物、セファランチン、グリチルリチン、抗ヒスタミン薬を併用しながらスーパーライザーⓇを照射した場合に、照射部位では非照射部と比較して、50%以上の発毛回復期間が短縮することを示唆する弱い根拠が見いだされている。

135)136).ただしプレドニゾロン内服、ステロイド外用、全身PUVA療法を併用した全頭型および汎発型には無効であった.レーザー治療の中で,LEDに関しては、AAに対する効果を実証した論文はないが、低出力レーザーに関しては、1名の患者に対してフラクショナルレーザーが発毛効果を来したとする症例報告が1報のみ存在する。137).

PDTに関しては有効性を示す報告はない.

いずれの治療の有用性も現段階では十分に実証されていない。

直線偏光近赤外線照射療法は熱傷を引き起こさないように1 回照射量に注意しながら、単発型および多発型の症例に併用療法の一つとして行ってもよいことにする。

一方レーザー治療とPDTは有効性を示す根拠はなく現時点では行わないほうがよい。

 CQ14 シクロスポリンA(CyA)内服療法は有用か

推奨文:CyA内服療法は行わないほうがよい。。・・・ 現段階では

 CQ15 分子標的薬の全身投与は有用か

エファリズマブ(抗CD11a抗体)

アルファセプト(Tリンパ球傷害性免疫調整合成タンパク)

アダリムマブ(抗TNF抗体) 等いろいろあるようです。効果にバラつきがあったり、経験量が少ないなどの理由で現在はおすすめではないようです。大学関連の施設ではある程度、症例が集まって使用例も増えてきたようです。 悪くなって早めに薬は使用できた方が効果があるようなデータになっています。 ただし、使ってみないとわかりません。

 CQ16 漢方薬療法は有用か

行わない方がよい、という学会の判断です。  個人差がありますので、実際に有効ならそれはそれで結構な事ですが。

 CQ17 抗うつ薬,抗不安薬の内服は?   行わないほうがよい.と学会の判断です。

 CQ18 タクロリムス外用療法は有用か?  タクロリムス外用療法は行わないほうがよいと学会判断

 CQ19 プロスタグランジン製剤の外用療法は有用か?  行わないほうがよい.

 CQ20 ビタミンD外用療法は有用か? 十分な症例数がないので行わないほうがよい.

 CQ21 レチノイド外用療法は有用か?    行わないほうがよい.

 CQ22 催眠療法は有用か?   行わないほうがよい.

 CQ23 心理療法は有用か?   行わないほうがよい.

 CQ24 星状神経節ブロック療法は有用か?  行わないほうがよい.

 CQ25 Platelet rich plasma(PRP=多血小板血漿)療法は有用か  ★ このパートは自分の施設は厚労省への申請が承認されましたので使用できます。

推奨度:C2推奨文:行わないほうがよい.・・・まだ症例数が少ないから

院長コメント::症例数が少ないからまだ行わない方が良い・・・という結論になっていますが、海外ではスタンダードに近い位置にある治療がPRPだと自分には思えます。 5年以内の英語の文献はほとんど読みましたが、海外では円形脱毛症の治療の主要な柱の一つです。 当院は厚労省に申請して認可してもらった施設です(第三種再生医療機関) 3回以上のPRP療法を行った場合にはステロイドの局注よりは効果があり、副作用も少ないと報告されています。 予想ですが、再発の確率は低下する可能性が高いと思います。ただし追加治療が必要な場合も多いでしょう。

解説:症例数が45例と限定的であるもののplatelet rich plasma(PRP:多血小板血漿)のAAでの発毛促進効果を評価するランダム化比較試験が実施されている。 平均4.85カ所の脱毛斑を有する多発型AA患者を対象にしたこの研究では12カ月後の時点でPRP治療群がステロイド局注群、プラセボ治療群と比較して有意に高い寛解率を示した。PRPは自己血を遠心分離して得られる血小板に富む血漿であり、種々の成長因子などを含むことから口腔外科、整形外科領域において創傷治癒の促進などを目的として使用されている。

PRPは毛乳頭細胞に作用し毛成長にかかわる因子の発現を増強する

あるいは自家植毛後の毛密度の上昇に寄与するなどの報告がある。

またステロイド局注に抵抗性であった蛇行型AA症例にPRPが有効であったとする症例報告もある

サイト製作者コメント:症例数は少ないですが、海外文献等を合わせると相当数の有効報告が存在します。

以上より限定的ではあるもののPRP療法の発毛促進効果を示唆するエビデンスが存在します。が、評価対象となる症例数は少なく学会的には現在は推奨しないという立場のようです。 かつ「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」などの法規に則ってのみ施術可能であり、保険診療外の治療なので現時点では行わないほうがよいという学会の判断です。(この判断はかなり前になります。2017年の発表とするとさらに数年前の医学的根拠に基づいての見解です。2024年現在、世界では標準的治療の一つと考えて良いと思います。 

コメント:当院は再生医療に関しては申請を受理されて治療が可能な施設となります。